仕事が休みの日にゆっくり寝て休もうと思ったら、近隣の工事現場から大声や怒鳴り声が聞こえてきたことはありませんか?
また声でなくとも、重機や工具の音が響いてうるさく感じた人も多いでしょう。
快適な暮らしを送るうえで、近隣からの騒音は深刻な問題の一つです。実際に環境省が基準を定めているほど、騒音は対処すべき問題として世間一般的に認知されています。[注1]

工事現場や職人の怒鳴る声がうるさい時の対処法や注意点を、元職人が詳しく解説します。
職人が大声や怒鳴り声を出す3つの理由
- 短気かつ口下手な人が多い
- 広い現場内で遠くの人へ話している
- 危険作業のなかで自然と大声になる
職人が怒鳴ったり大声を出したりすることには、上記3つの理由があります。
それぞれについて詳しく解説します。
短気かつ口下手な人が多い
昔気質な職人に多いのが、短気でカッとなりやすく口下手であることです。
何度も同じことを言わされたり、細かい説明を求められたりすると、ついつい大声になってしまいます。
また、たとえば新人に業務を教えるにも、懇切丁寧に優しく教えることが苦手で、ついつい声を荒らげてしまうことも多くあります。
よく現場では「技は見て盗め」と言いますが、それは「わざわざ言葉で教えるほど俺は気が長くないぞ」という、職人独特の意志の現れです。
もちろん、職人の全員が短気で口下手というわけではありませんが、そういう人が比較的多いということは覚えておきましょう。
広い現場内で遠くの人へ話している
建設現場は広いため、用がある人の近くまで行って話しかけるのが面倒です。
デスクワークのように近い距離感でもありませんし、もちろんチャットやメールなども送れないため、遠くの相手に向かって大声で呼びかけることが多くあります。
むしろ、わざわざ近くまで行って話しかけていると、「手を止めないで、そこから叫べばいいだろう」と怒られることも多いです。
結果としてその人だけでなく、近隣住居にも聞こえてしまうほどの大声が飛び交ってしまいます。
危険作業のなかで自然と大声になる
日常生活のなかでストレスや緊張感、焦燥感を感じているタイミングに、声を荒らげてしまう人もいるでしょう。
建設現場では、クレーンで揚重している資材が多くの人の頭上を通過する、重機が作業員の近くを通過するなどの危険作業が多く、職人はいつでも油断せず気を張っています。そして気を張った結果として、ふとした時に出した声が大きくなってしまうのです。
そのように、注意喚起や防衛本能によって大声が出てしまうこともあります。
怒鳴られている相手が「大声を出させている」場合もある
うるさく感じている側からすれば、怒鳴ったり大声を出したりしている人が悪いと感じがちですが、実際は怒鳴られている相手が悪質であるケースもあります。
たとえば、指示を無視して通ってはいけないルートを通っていたり、揚重中の資材の真下や稼働している重機の近くを横切ったりなど、危険作業を咎めるために仕方なく大声を出すことも多いです。

うるさくしている人にイラッとくる気持ちはわかりますが、必ずしもうるさい人=諸悪の根源だと決めつけないでいただけると、元職人としてもありがたいです。
なんにしても声がうるさい時はゼネコンへ連絡
職人がうるさいことにも理由があると解説してきましたが、どんな理由があっても近隣の方々の快適な生活を阻害していいわけはありません。
ご自身の居住環境を守るためにも、うるさいときはうるさいと、泣き寝入りせずにしっかり伝えることを検討しましょう。
ただ注意点として、伝える相手は職人ではないことを覚えておきましょう。
環境によっては、うるさくしているのがどの職人かわかりませんし、違う人に言っても「俺らじゃない」などと言われて終わりです。
なにより、うるさくしている職人に部外者が直接言ってもすぐに改善されないでしょう。
工事現場の騒音に対して一番効果的なのは、担当しているゼネコンや工務店に連絡することです。早い場合は次の日の朝礼時に、現場所長から職人全員へ周知してもらえます。

工事現場を囲む仮囲いに設置されている建設業の許可票や、建築計画のお知らせと書かれた看板にゼネコンや事業者の情報が記載されています。
職人の怒鳴り声や大声がうるさい場合は、そこに電話をして相談してみましょう。
工具や重機の音が原因である場合は改善が難しいかも
ここまで職人の大声や怒鳴る声について、理由や対策を解説してきました。
ですが工事現場では職人の声以外にも、電動工具や大型重機といった大きな音を発生させる物が多くあります。
そしてそれらの音は工事を進めるうえでどうしても出てしまうため、改善を望めないケースが多いです。

大きな音を伴う作業は一定の期間に集約させて、予め近隣の方にも「申し訳ないですがこの期間だけ我慢してください」と事前に伝達しておくなど、ある程度の配慮はしてもらえるでしょう。
ただ工事が始まった後の改善に関しては難しいと覚えておいてください。
デシベルを測定してから相談するとかなり有効
職人の声や工具の音、重機の可動音など、とにかく現場の音がうるさい場合は、「デシベル」を計測してみることもおすすめです。
デシベルとは音の大きさを示す単位で、計測しておくことで騒音レベルを説明する時に「このくらい大きな音なんです」という基準にできます。
一般的に、日常で静かに感じるのは45db程度、日常生活を送るうえで好ましいのは60db以下だとされています。
以下、表でおおまかなデシベルの度合いを解説します。
数値 | 度合い |
---|---|
50デシベル | 家電が出す程度の気にならない音 |
60デシベル | 会話する声程度の音 |
70デシベル | 掃除機などの気になる音 |
80デシベル | サイレンなどうるさいと感じる音 |
90デシベル | 不快に感じるほど大きな音 |
100デシベル | 電車が通過したときのような騒音 |
110デシベル | 驚くほど大きな騒音 |
120デシベル | 聴覚に悪影響を及ぼすほどの騒音 |
上記表を見てわかるとおり、80dbを超えたあたりから生活音の範疇を超えて、うるさいと感じるようになります。
ゼネコンへクレームを入れる際に「とにかくうるさくて…」では、ちゃんと対応してもらえない可能性があります。よって、連絡する前に一度機械で測定してみて、どれほどうるさいのかを数値化することがおすすめです。
そして実際に出してよい音の大きさとして、特定建設作業(法律)では85db、指定建設作業(条例)では80dbと騒音規制法で定められているため、万が一90dbもの音が出ていたら完全にアウトです。[注2]
もちろん職人の怒鳴り声も、それほどまでにうるさければ確実に改善してもらえるでしょう。

【結論】職人の声がうるさいならすぐゼネコンへ相談!それ以外はデシベル次第
環境省がおこなった調査によると、騒音による苦情のうち建設作業が原因であるものは38.5パーセントで、全体の約4割が建設作業へのクレームであることがわかります。[注3]
[注3]令和元年度(平成 31 年度)騒音規制法等施行状況調査の結果について|環境省
元職人という立場で恐縮ながら、建設業が大きな音を伴う仕事であることは間違いありません。
ただ、だからといって近隣の人の健康や暮らしが侵害されていいことにはなりませんので、我慢できないほどの不快な音が続く場合は、遠慮せずにゼネコンへ相談してみましょう。
※本稿は建設事業者の方々への無闇矢鱈なクレームを推奨するものではありません。