【建設業】職人を育成する難しさと注意点について元職人が解説

【建設業】職人を育成する難しさと注意点について元職人が解説 職人コラム
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建設業の職人は育成がとても難しいです。

体力仕事がキツいだけでなく、先輩や親方から叱責されることも多々あるため、毎年多くの若い人が長続きせず辞めてしまいます。

実際に平成28年時点の総務省による調査では、建設業就業者の平均年齢が44.2歳と比較的高齢であり、若い人の割合が少ないことがわかります。[注1]

若く優秀な人を育成しなければならないのは、建設業はもちろんどんな業界でも同様です。

本記事では職人育成の難しさや注意点、コツなど詳しく解説します。

[注1]建設業就業者の年齢構成|総務省

【大前提】職人としてしっかり育つのは10人中1人程度

  • 10年以上同じ工務店(親方)に従事する
  • ほとんどの仕事を1人で完遂できる

上記を職人の育成における成功とした場合、上手くいくのは10人中1人程度しかいません

筆者の体感であるため正確な数字ではありませんが、多くの人が辛い仕事に挫折したり別の工務店に逃げたりして、最初に育ててもらった工務店(親方)の元で長続きしないことが実際にあります。

そのように、「職人として育てた側」の利益になるまで順調に育ってくれる人は少ないことを覚えておきましょう。

元職人Y
元職人Y
筆者が職人のころは、同期の若い衆が5人ほどしましたが全員辞めたり飛んだりしていなくなりました。最終的に筆者も辞めているため、建設業において若い人が育ちづらいというのは間違いないことだといえます。

育成が難しいからこそ、その理由やコツを押さえて間違いない方法で育成をするべきです。まずは以下より、職人の育成が難しい理由について解説します。

建設業の職人が育たない5つの理由

建設業の職人が育たない5つの理由

建設業における職人の育成が難しい理由として、以下の5つが挙げられます。

  • 一般企業と比較してお粗末すぎる教育体制
  • 就業前のイメージとの大きなギャップ
  • 想定していた以上のハードワーク
  • ハラスメントなんて関係ない縦社会
  • 若い人にとって魅力が少ない労働環境

それぞれについて、以下より詳しく解説します。

一般企業と比較してお粗末すぎる教育体制

一般企業の場合は研修セミナーや、教育用のマニュアルなど新人を教育するための環境が整っています。

また明確な教育係も固定で決まっているため、どういう風に学べばよいのか、わからないことを誰に聞けばよいのかを迷うことがありません。

ですが職人の場合はそういった準備がなく、その日ごとに新人を手元に付けた(手伝わせる)人が、育成のルールが定まっていないなかで仕事を都度教えます。

それどころか「仕事は見て盗め」といった昔ながらの精神も根付いているため、場合によっては何も教えてもらえないことも多いです。そして教えてもらえないにもかかわらず、何をしていいかわからずうろたえていて「ボーっとしているんじゃねえ!」と怒鳴られることもあります。

そのように建設業の職人は、教えてもらうことが当たり前と考える人が多い若い世代にとってとても相性が悪く、結果として嫌になり辞めてしまうことが多いのです。

就業前のイメージとの大きなギャップ

雇用形態や働き方が異なるだけで、職人も仕事や人間関係に悩むことが一般企業と同様にあります。

そして職人に対して、一般企業と違う良いイメージを持って就職してみると実際は全く異なり、そのギャップが嫌になって辞めてしまう人も多いです。

たとえば「職人といえば豪快で男らしい人が多い」「ガテン系だしストレスが少なそう」といったイメージを持つ人がいますが、実際には職人のなかにも神経質だったりネチネチしていたりする人もいます。また、過剰な上下関係をストレスに感じることも多いです。

そういった就業前と就業後のギャップに苦しみ、早くに辞めてしまう人も多いです。

想定していた以上のハードワーク

建設業の職人といえば夏の暑さや冬の寒さ、雨風に負けないように働くための強い肉体や精神が必要です。

ハードな肉体労働であるため、そもそも体力的に厳しく感じて辞めてしまう人も多くいます。

元職人Y
元職人Y
筆者が現役時代に面倒を見ていた職人たちのなかにも、「辛くて仕事をやめたいです」という人は多かったです。そのたびに励ますんですが、職人である以上それはこなせないとダメなので、頑張れとしか言えないんですよね…

就いてみたら想定していた以上のハードワークだったということも、若い職人が育たない理由のひとつです。

ハラスメントなんて関係ない縦社会

近年、ハラスメント問題は深刻化しています。2020年の厚生労働省の広報によると、2018年時点でハラスメントの相談件数は8万件を超えており、年々増加しているとのことです。[注2]

そういった社会においても、職人業界はハラスメントなんてお構いなしの縦社会で回っています。

パワハラととれる言動・行動は当たり前で、セクハラやモラハラなどあまり気を遣わない人も多いです。そういったものに不慣れな若い世代がショックを受けて、辞めてしまうこともあります。

元職人Y
元職人Y
それに難色を示すと逆に怒られたりいじめられたりしてしまうこともあるため、ハラスメントに過敏な人はそもそも難しいかもしれないですね…気を遣う人も増えてきたものの、やはり業界全体で見て気にしていない人の方が多いです。

[注2]広報誌「厚生労働」2020年6月号 特集|厚生労働省

若い人にとって魅力が少ない労働環境

昔はサラリーマンの初任給よりもお給料が高額で、毎日キャバクラに連れてってくれる先輩がいるほど建設業界が潤っていた時期がありました。

そういった時代の話を聞いて魅力を感じ建設業界に入る人もいるのですが、現代は不景気であるため請負単価も下がっており、サラリーマンの初任給とあまり変わらない、むしろ少し安いといったケースが多々あります。

オシャレなオフィスなどで優雅に仕事をするわけでもなく、福利厚生が手厚いわけでもないため、建設業界は若い人にとって魅力が少ない労働環境となっているのです。

本当にモノ作りが好きであったり、体を動かすのが性に合っていたりする場合は魅力的な仕事ですが、それ以外の人にとっては魅力が薄いため、早期離職につながりやすいといえます。

職人育成におけるたった2つの注意点

職人育成におけるたった2つの注意点

  • 昔ながらの固定概念にこだわらない
  • 守らせなくてもよいルールを押し付けない

職人の育成においては、上記の2点にのみ注意しましょう。

以下より理由を解説します。

昔ながらの固定概念にこだわらない

職人に多いのが、昔ながらのやり方や風習にとらわれ過ぎていることです。

本来、新人の育成というのはその人ごとの特性や性格に合わせて的確におこなうべきなのですが、前述したような「仕事は見て盗め」といったようなものが職人育成の当たり前として形骸化してしまっています。

そういった固定概念にとらわれず、臨機応変に育成に携わることが育成を成功させるためには重要です。

「昔はこうだった」「俺たちはこうだった」と言っても、若い人からすれば「自分たちは違うけど…」としか思われずどこ吹く風です。時代に逆行するか適合するかでは適合する方が上手くいくので、昔ながらにとらわれ過ぎないようにしましょう。

守らせなくてもよいルールを押し付けない

職人の決め事やルールのなかには、守らなくてもよいものがあります。
たとえば筆者がやっていた型枠大工という職種の場合、以下のような決め事がありました。

  1. 朝礼前に電源を確保してコンプレッサーを回しておく
  2. KY用紙の名前部分以外を記入しておく

これらのルールは全て仕事の進捗に深くかかわるもので、勉強のためにも若い衆がやるべき段取り仕事です。他にもありますが、こういったものはルールとして定めてやらせるべき業務だといえます。

元職人Y
元職人Y
これを嫌がるのであれば、そもそも職人として働く覚悟が足りていないです。その場合はこちらがどんなに頑張っても育成は上手くいかないため、ガツンと言うか見限るかを選択することになるでしょう…

一方で、「一服になったら全員分のジュースを買ってくる」「彼女ができたら先輩に紹介する」といったような、業務に直接かかわらない意味のないルールもあります。それらは間違いなく守らなくてよいルールです。

それらを全て混同して「自分たちが若いころにやっていたから」という理由で強要することは、若い職人のストレスになるため避けるべきです。しつけの一環としてやらせたい気持ちもわかりますが、育成の成功を第一とするならば守らなくてよいルールは強要しないようにしましょう。

職人育成を成功させるための3つのコツ

職人育成を成功させるための3つのコツ

職人の育成を成功させるためのコツとして、以下の3つを意識しましょう。

  • 教育係を明確に定める
  • 「職人とはこういうもの」という感覚的な教えは使い過ぎない
  • 懐の深さを見せる

職人として入ってきた時点で、全員ある程度の覚悟は持っています。よって「優しく教える」「マニュアルを用意する」といった過度な気遣いは不要で、上記3つのポイントさえ押さえておけば十分です。

それぞれについて詳しく解説します。

教育係を明確に定める

教育係を明確に定めて、その人に付きっきりで仕事をさせましょう。

理由としては、現場作業において師匠が違うとやり方や発言に差異があり、どれを優先すべきかわからなくなってしまうからです。

元職人Y
元職人Y
実際に筆者も、若い頃は色々な人に仕事を教えてもらって、勉強になった一方で混乱もしました。Aさんに教わったことをしていたらBさんにそれは違うぞと言われたり、それを直していたらCさんからまた別の方法を推奨されたりなど…

またできるならば、親方自らが教えるのが一番理想的です。上記のように誰かからやり方に口を出されたとき、「これは親方から習いました」といえば相手も深く言及してこないからです。

育成はできるだけ上の立場の職人を教育係に任命しておこないましょう。

「職人とはこういうもの」という感覚的な教えは使い過ぎない

昔ながらの「職人とはこうあるべき」という部分によって感覚的にものを教えるケースがありますが、論理的に説明できないことは教えてはいけません。

たとえば「職人なら昼飯くらい早く食え」といったような教えがあります。これはお昼ご飯をササっと食べて昼寝する人が多いことから、「ダラダラ食べて物音させるなよ」「みんなのペースに足並みを揃えろ」ということからきているのですが、言われた側からすれば「昼休みの時間の範疇ならどうでもいいでしょう?」と思ってしまいます。

前述したような「昔ながらの慣習」に近い部分かもしれませんが、育成を成功させたいならこのような感覚的なことを強要してはいけません。

逆に明確な理由があるものならばそれはしっかりと教育すべきものなので、自分が言おうとしていることが感覚的なものでないか、理にかなっているかは考えてから発言するようにしましょう。

懐の深さを見せる

若い人は建設業の職人を男らしい仕事だと信じて入ってきているので、狭量な人には従事したくないと考えます。

たとえば飲み会に誘われて行ったら割り勘だった、すごく些細なことで怒られたなどで器の狭さが露呈すると、すぐ愛想をつかされてしまうかもしれません。

「金の切れ目が縁の切れ目」ともいうので、金銭面にはとくに懐の深さをみせるべきです。

一服のジュース代は毎回払う、たまにおごりで飲みにつれていく、現場で黒字が出たらしっかり配当金を払うといったことをするだけで、若い衆は「この人について行けば間違いない」と信頼するようになります。

大きな人だなと思わせることで素直になんでも聞き入れるようになるため、何事においても懐を深くすることが重要です。

優秀な職人を育てるために育成方法には注意しよう

優秀な職人を育てるために育成方法には注意しよう

優秀な職人を多く育てることで、今後の建設業界はさらに健全で盛んになります。

育成方法に注意して、コツをおさえて教育を進めることで、若い職人を長続きさせることができるでしょう。

本記事で紹介したポイントを意識して、ぜひ若い職人の育成に取り組んでみてください。

この記事を書いた人
元職人Y

神奈川県横浜市生まれの20代後半の男
10年ほど型枠大工として活動して親方業を経験
玉掛けやクレーン操縦など、現場職に必要不可欠な資格を多数保有
現在はWeb系の仕事へ転身し、建設業についてのリアルな情報を発信して認知度向上とイメージ改善に努める

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