お菓子を作る人をお菓子職人、漆(うるし)を扱う人を漆職人と呼ぶように、「職人」とはさまざまな業界のプロフェッショナルを指す言葉です。
そして建設業では、大工や鳶など様々な職種が現場内で混在しているにもかかわらず、全てを「職人」として一括りにされています。
そんな建設現場の職人について、本記事ではなり方や今後の必要性などを詳しく解説します。
「職人」とは高い技術と豊富な知識をもった仕事人のこと
冒頭でも解説しましたが職人とは、ひとつの分野において熟練した技量と豊富な経験、深い知識を備えたプロフェッショナルのことです。
機械やシステムなどを頼りとしない、手作業による技術を極めた人を指します。
その分野において優れた感性をもち、本来は確実性が低いはずである目測・目分量といった、感覚的なものの精度が高いことが特徴です。
また職人にはこだわりが強く、妥協できない人が多くいます。丁寧かつ高品質な仕事を心掛けており、頑固で実直という意味である「職人気質」という言葉も、その職人独特の性格を由来としています。
【職人のなり方】建設現場の職人は誰でもなれる
建設現場の職人になるために優れた経歴や学歴、資格などは一切必要ありません。
多くの工務店ではテストなどもなく、「働きたいです」の一言だけで職人として働き始められます。建設現場の職人は、門戸が広く誰でも始めやすい職人なのです。
職人になるために必要な物を強いて言うなれば「健康な肉体」くらいです。やはり肉体労働ですので、問題なく体を使えないと業務に支障をきたします。
走ったりしゃがんだりといった基本的な動作ができるのであれば、職人として仕事が始められるでしょう。
「職人」という言葉にこだわりが強い人もいる
建設現場で働き始めてすぐに職人を名乗れるかというと、そうでもありません。
前述のとおり職人とは、豊富な経験・深い知識・確かな技術を兼ね備えている熟練度の高い人のことを指します。
そのため建設現場で働く人の中には、自分が認めている人だけを職人と呼び、それ以外は大工や鉄筋屋といった職種名で呼ぶ…と使い分けている人もいます。
実際に筆者も、建設現場で働き始めて1年ほど経ったとき先輩から、「まだ職人には成れてないな」という発言を受けました。
そのように、「職人」という言葉に対して思い入れを持っている人も多いため、職人と呼ばれること=仕事を認められたということなのです。
AIやロボットの台頭により職人はどうなる?
AI技術やロボット工学の進歩が目覚しい昨今、建設現場においてもそれらの技術を導入することを推進しています。
たしかに炎天下での熱中症や高所作業など、工事現場の作業員にはそもそも危険が付きまとうため、省人化に成功すればそれだけ職業リスク軽減の一助となるでしょう。
実際に大手ゼネコンである清水建設では、溶接作業を自動で行う「溶接ロボット」や、搬入されて資材を自動で運搬する「自動搬送ロボット」などを開発しています。
出典:清水建設|最先端技術を搭載した建設ロボットの自律制御を実証します
その他ゼネコンでも開発は進んでいるため、建設現場にロボットが本格導入されるのはそう遠くない未来なのかもしれません。
ただやはり、ロボットが多種多様な現場で人間と同じパフォーマンスを発揮するのは難しいです。
たとえば資材が溢れかえっている通路を進む、人間の手でないと届かない狭い部分を仕上げるなど、人間でないと難しい作業は多くあります。
よって建設現場における職人という仕事は今後もなくならず、ロボットができるところはロボットに任せて、「作業を分担していく」という可能性が高いでしょう。
むしろタワークレーンなどと同じく、職人がロボットのマニュアルや使い方を学んで、道具のひとつとして使うようになるかもしれません。
手に職をつけておくことに損は無い!
筆者は今でこそWeb系企業の会社員として働いていますが、「手を抜かず良いものを仕上げる」という職人としてのマインドは今でも役立っています。
20代のころの職人としての経験が、自分の精神や考え方を大きく成長させてくれました。
なにより手に職をつけたことにより、いつでも職人として再スタートできるという安心感もあります。
先述のとおり門戸も広いため、職人に興味がある方はぜひ気軽に始めてみてください。
覚えた技術や得た経験は、絶対に無駄になりません。