「常用の職人」「応援の職人」とは?違いやメリット・デメリットを解説

「常用の職人」「応援の職人」とは?違いやメリット・デメリットを解説 職人の基礎知識
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建設現場で仕事をしていると、「常用」「応援」といった言葉を耳にします。

どちらも職人を区別するための言葉なのですが、現場職を始めたての頃は仕事を覚えるのに必死で、こういったニッチな現場用語について学ぶ機会は中々ありません。

もちろん、これらは経験年数を積めば自然と理解するものです。ただ、早く理解しておけばその分違った視点で仕事が見られるので、現場仕事がより面白く感じるでしょう。

職人における「常用」と「応援」について、本稿で詳しく解説します。

常用の職人=専属で雇用された職人

常用の職人とは専属で雇用された職人のこと

まず常用の職人とは、イラストのように所属する工務店(班の親方)やゼネコンから専属で雇われている職人を指します。

工務店やゼネコンから割り当てられる仕事をして、日数×いくらでお給料を貰う形式です。

単純に「専属で使われている立場=常用」と、一括りにされることもあるので、覚えておきましょう。

固定給の工務店もごく稀にある

前述のとおり、基本的に建設業の職人は日給月給とよばれる「日数×日当=月給」の給与体系です。

ただ平成29年の社会保険加入義務を皮切りに、建設業界も徐々に変化しており、まだ少ないものの固定給の月給制の工務店も存在しています。

出典:国土交通省 社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン

よって、以前までは日数×いくらで給料をもらっている職人を常用としていましたが、近年では一概にそう区別できなくなっているのです。

  • 自分で仕事を請け負っていない
  • 指示された仕事のみを行う
  • 特定の班・工務店に所属している

給与形態に関わらず、上記のような使われている立場であれば常用の職人です。

応援の職人=人手不足で呼ぶ職人

応援の職人とは人手不足で呼ぶ職人のこと

常用の職人に対して応援の職人とは、人手不足で工期に間に合いそうにないときに呼ぶ手間請けの職人のことです。

イラストのような別の工務店・班に合流したり、所属する班や工務店が請けている現場以外の現場を手伝う場合は、応援の職人という扱いになります。給与形態も常用と同じく、日数×いくらで支払われます。

基本的には職人間で使う言葉であり、現場監督やゼネコンが職人のことを応援か否か気にすることはありません。

ここでも単純に「他の班・工務店の仕事を手伝う=応援」と覚えましょう。

常用と応援はどちらがいい?

やった分だけ貰える…というのは常用も応援も同じです。

ただ両者には明確な違いがあるので、人によって向き不向きが綺麗に別れています。

常用であることのメリット・デメリット

常用のメリット

・決まった現場があり仕事が途絶えづらく安定感がある
・浮いたお金があれば班員で山分けできる(配当)
・毎日の仕事が把握できて勉強しやすい

常用のデメリット

・自分の現場であるため大きな責任が伴う
・一現場に集中するためリフレッシュの機会が少ない
・ゼネコンから直接の場合は早上がりしづらい

以上が常用で仕事をするうえでのメリット・デメリットです。

常用の場合、自分(達)の現場があるため仕事が一定量あり、休みができづらいため安定した収入が見込めます。

また現場が終わった際、請負の金額から浮いた分だけ配当金(ボーナス)として仲間内で山分けできるため、モチベーションも維持しやすいでしょう。

さらに、決まった現場があれば仕事を覚えやすいので、職人になりたての人は勉強がしやすいです。

対してデメリットとして、まず自分たちが請け負う現場であるため間違いや工期遅れなどの責任が伴うことが挙げられます。

またひとつの現場に集中して通い続けるため、繰り返しの工程や変わらない通勤風景に飽きてしまうこともあるでしょう。

そして稀ですが、ゼネコンが直接馴染みの職人に声をかけて、常用として現場に呼ぶ場合があります。その際は現場監督=直属の上司となるため、本来の自分の業種の仕事が終わっても早上がりしづらいです。余った時間で清掃など、できることをわざわざ見つけて過ごさなければなりません。

応援であることのメリット・デメリット

応援のメリット

・他社(他人)の現場であり気が楽
・最高単価の日当が貰えるケースがほとんど
・仕事が用意されていて考える必要が無い

応援のデメリット

・辛い作業を押し付けられることも多い
・仕事が途絶えるタイミングもある
・応援に出過ぎるとお返しを要求されることもある

以上が応援で仕事をするうえでのメリット・デメリットです。

応援の一番のメリットは気軽さです。自分が請けている現場でないため工期や職人同士の兼ね合いなど気にせず、あくまで任された仕事のみに集中できます。

また応援では若手ベテラン問わず「職人をひとり間違いなく呼べる単価」で呼ばれるため、普段自分が貰っている日当以上の単価を貰えることも多いです。(ただ多くの場合、差額分は自分に入らず親方や工務店にいきます…)

常用と違って仕事も用意されたものをこなすだけなので、とくに頭を使う必要もないでしょう。

ただその用意される仕事として材料上げや荷揚げといった、辛い仕事を割り当てられるケースも多いです。

さらに人手不足以外のタイミングでは応援は不要であるため、応援だけに頼るとどうしても仕事が途絶えて収入が減るタイミングがあります。

またよくあることが応援のお返しを求められることです。応援は上述のとおり「気軽かつ高単価で呼ばれる存在」であるため、あまり応援に出過ぎると「そっちもたまには俺らのこと呼んでよ」と、応援のお返しを要求されることもあるので覚えておきましょう。

安定感なら【常用】気楽さなら【応援】

ここまでの結論として、収入など安定感を求めるのなら常用を、気軽さを求めるのなら応援を選びましょう。

ですが実際、どちらも相反するメリット・デメリットがあることは確かなので、片方のみで職人として生計を立てるのは難しいと覚えておいてください。

常用で仕事をしつつ暇なとき応援に出るのがベスト

常用で仕事をしつつ暇なとき応援に出るのがベスト

職人の仕事でベストなのが、常用の現場を持ちつつ手が空いたタイミングで応援に出ることです。多くの工務店・班で当たり前の業務形態でしょう。

そして現場監督や職人としてデビューしたての方は、本記事で紹介したような職人事情を知っておくことで、一服中の雑談でも一歩踏みいった話ができるようになります。

建設という大きい枠組みのなかでは些細な知識ですが役立つシーンもあるため、ぜひ覚えておきましょう。

この記事を書いた人
元職人Y

神奈川県横浜市生まれの30代前半の男
5年ほど型枠大工として活動
玉掛けやクレーン操縦など、現場職に必要不可欠な資格を多数保有
現在はWeb系の仕事へ転身し、建設業についてのリアルな情報を発信して認知度向上とイメージ改善に努める

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