型枠大工とは?仕事内容や年収、必要な資格や使う道具を全解説します

職人の基礎知識
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筆者は以前、型枠大工という仕事をしていました。

型枠大工と聞いて、どんな仕事かをパッと思い浮かべることが出来る人は少ないでしょう。

本記事で型枠大工の仕事内容や年収、必要な工具など全て解説します。

型枠大工とは?

型枠大工とは、コンクリートの建造物を建築する仕事です。

コンクリートが狙った形に固まるように、木の枠を組む事が主な仕事です。

上画像のベニヤ板桟木で作られた木の枠が型枠(仮枠)と呼ばれ、型枠を扱う仕事なので型枠大工と呼ばれます。

もちろん、型枠を組み建てるだけが仕事ではありません。

詳しい仕事の流れを、次章で解説します。

仕事内容・作業の流れ

では、型枠大工がひとつの現場に取り掛かる際の仕事の流れを解説します。

建物はビルだと仮定します。

図面から材料の拾い出し

まずは建築主(元請け)から建物の図面を貰い、必要な資材の拾い出しを行います。

枠は何枚必要か、金物はどのくらい使うか等を計算します。

よって仕事を知り尽くした親方や、それに準ずるベテランの職人が行う業務です。

最初の段階で建物の全図面が出来ていることはほぼ無いので、現場を進めながら図面が作成or訂正される度に不定期で行う作業です。

材料の加工&段取り

拾いの後、もしくは同時進行で、材料の加工段取りをしていきます。

この加工も、現場が進むにつれて必要な材料が増えたり変更した場合に、現場と並行して不定期に進められます。

また、使用する金物をすぐに使えるように段取りしておくことも、加工のタイミングで済ませておくと良いでしょう。

では、以下からどんなものを加工・段取りをするか解説します。

板割り

ベニヤ板には、ニーロク(600mm×1800mm)やサブロク(900mm×1800mm)といった規格のサイズがあります。

当たり前ですが、どこを測っても規格サイズで割り切れるような、都合の良い建物なんてありません。

なので、第1段階として必要な寸法でベニヤ板を割いていく必要があります。

この作業を板割りといい、加工をするにあたって真っ先にとりかかる作業です。

基礎とベースの加工

土に隠れていますが、建物の根元には基礎と呼ばれる土台部分があります。

型枠大工が一番最初に現場で関わるのは、この土に隠れる基礎の部分です。

なので加工でも、基礎などの枠を初めに作ります。

上物の加工

など、建物の一部としてイメージしやすい部分に使う枠を加工します。

その他にも梁、開口、階段などがあり、部分によって桟木との組み方やベニヤの使い方は変わります。

「開口の枠を加工して」などと言われた時に、パッと形が思い浮かぶのが、型枠大工としての最低ラインです。

スラブの加工

前項で天井がありませんでしたね。

天井で使う材料はスラブ材と言い、最後に加工します。

スラブ材は段差などない限りはベニヤのみなので、板割りをしていた人が継続してスラブ材の加工に入ります。

スラブ材と止め枠、この加工が始まれば一職人の立場でも「もうすぐ加工終わるな」と判断できます。

セパなど金物の段取り

コンクリートの厚みを調整するための、セパと呼ばれる金物があります。

このセパは段取りをしないとすぐに使えないので、この段取りも加工の時にやっておきたいです。

また、後々必要なサポート・パイプ・フォームタイなどの確保もしておきましょう。

その他、余裕があれば行うこと

コンクリートの厚みは、前述したようにセパという金物で調節します。

そのセパを挿すためのを作った枠に開けたり、べりっと簡単に解体出来るように剥離剤でコーティングすることも、現場を円滑に進めるためには必要です。

資材の搬入

では、大元の流れに戻ります。

加工が済んだら、加工した材料を現場に搬入します。

現場によりけりですが、基本的に加工材をいっぺんに搬入することはありません。

資材を貯めて置ける都合の良いスペースがどの現場にもあるわけないですし、場面場面で邪魔になる可能性も高いので、こまめに搬入をしていきます。

工程に沿って使う材料を搬入し、使い切る頃に次の材料を入れる。

この繰り返しで現場を回していきます。

墨出し、敷桟

型枠を建てるために床に壁の位置を出すことを墨出しと言い、高さを揃えるために敷物をすることを敷桟と言います。

ここが壁、ここが柱でここが扉というように、コンクリートを打つ部分を床に記します。

そして、床の高さを揃えることと、型枠の根元を釘で留めれるようにするという2つの目的のために、墨に沿って桟木を引く敷桟を行います。

型枠の建て込み

そうしてようやく、型枠大工の本分とも言える建て込みが始まります。

型枠大工の腕の見せ所であり、現場の儲けに関わる部分です。

垂直を見ながら用意された枠を使う場所に、釘で次々と建てて行きます。

枠の根元に2本、横に4~5本釘打ちしておくと間違いないでしょう。

梁架け

壁の建て込みとは少し違いますが、と呼ばれる上の階の床を支える部分があります。

壁の枠の上に乗る枠で、バラバラの枠を1枚ずつ手で架けたり、1本に組んでからクレーンで吊って架けたりもします。

構造によっては梁形が表面に出ないこともあるので、補足で説明しました。

パイプ締め付け

建てた枠同士は現状、釘でとまっているだけです。

パイプ締めを行うことで、複数の枠を1枚物にして頑丈にすることが出来ます。

この時に必要なのがパイプはもちろん、セパフォームタイです。

りゃんこと呼ばれる形で締めないと意味が無いので、注意しましょう。

スラブ段取り、スラブ貼り、止め枠

部屋内から見たら天井、フロアで見ると床のコンクリートを打つために、スラブ貼りという作業を行います。

スラブ貼りはバタ角という木材とサポートを使って大引という段取りをして、転がし(パイプや角材)を並べて、ベニヤを貼って完了です。

このスラブ貼りも、新米では時間もかかった上にガタガタになってしまったりなど、大工としての腕が露骨に結果として見えます。

スラブを貼ったら今度はコンクリートに段が付く場合の止め枠や、設備のためのインサート、避難ハッチなどスラブ上の仕事を済ませて、スラブを鉄筋屋さんに引渡します。

固め、押し引き

スラブ上の仕事が片付いたら建て込みをした階に降りて、枠の通りを真っ直ぐにするための押し引き、コンクリートの圧に耐えられるように固めという作業を行います。

サポートチェーン・ターンバックルを使い、壁の通りを真っ直ぐにしたり、柱のねじれを無くしていきます。

また、セパが通っておらずこのままではパンク(破裂)してしまう箇所はサポートでガチガチに押しておくなど、心配な部分を固め(補強)ていきます。

押し引き→固めの順でないと、せっかく真っ直ぐにした通りが歪む可能性があるので注意です。

コンクリート打設の合番

そしてやっとコンクリート打設です。

どんなに手を尽くしたとしても、念の為コンクリート打設時には合番(立ち会う)する必要があります。

ただ見てるだけでなく、心配な部分を打つ時に注意喚起したり、触って欲しくない所を伝えておくなど、やることは沢山あります。

上の階の墨出し、敷桟

下の階と同じように墨出しと敷桟を行います。

材料上げ

10階建ての建物を作るのに、10階分の型枠は使いません。

スラブ材は2階分作りますが、壁などは1フロア分を使い回します。

なので、コンクリートを打って階が上がる度に、下の階で使った型枠や金物を人力で上げる作業が必要となります。

先に材料を上げてしまうと墨出しの邪魔になるので、材料上げは墨出しの後に行います。

この材料上げと呼ばれる作業が、型枠大工の仕事の中で1番の重労働です。

この際、型枠にコンクリートなどがこびりついていた場合はケレンという作業でコンクリートをこそぎ落とします。

型枠の建て込み(後は繰り返し)

あとは同じ工程の繰り返しです。

こうして建物は、上へ上へと進んで行きます。

ちなみにここまで紹介した順番は、工期や人員状況、他職との絡みで変動します。

他職との絡みで何かを後回しにしたり、状況によって臨機応変に対応する事が必要です。

また、高層階になって建物の形が変わることもありますし、繰り返し使って枠がダメになることがあります。

屋上では機械台やパラペットも出来るので、いつでも加工に戻る可能性があると覚えておきましょう。

他の業種との違い

職種 概要
型枠大工 コンクリートの建造物に関わる
木造大工 木造の建造物に関わる
宮大工 神社や仏閣に関わる
足場や詰所など、各職人の作業に関わる
鉄筋屋 コンクリートの建造物に関わる
土方、土工 コンクリート打設や掘削など、その他簡単な専門仕事など広く作業を行う

必要な道具(工具)

型枠仕事で使う道具や工具を解説します。

名称 用途 使う場面
腰道具1式 手ノコやスケール、ハンマーなど 常時
インパクトドライバー 金物の緊結や取付けに使う パイプ締め、固め、押し引き
ドリルドライバー 型枠に穴をあける 建て込み
充電丸ノコ 木材を素早く簡単に切断できる 加工、建て込み
グラインダー
(サンダー)
鉄やコンクリートを切断する 型枠のケレン
ハンマードリル コンクリートに穴をあける 固め、押し引き
釘打ち機(テッポウ) 指で引くだけで釘を打てる 加工、建て込み、スラブ貼り
コンプレッサー&ホース 圧縮した空気を作り、エアホースで送り出す
レベル(レーザー) 物の水平・垂直を見る 敷桟、墨出し

必要な資格

作業をする上で、必要な資格を紹介します。

名称 概要
一級型枠施工技能士 腕が良い証明
型枠支保工の組立て等作業主任者 型枠の現場を仕切るための、親方クラスが所持する資格
職長教育 工事現場での指揮監督に必要
玉掛け技能講習(1t以上) クレーン等で資材を搬入、移動させる時に必要な資格
タワークレーン タワークレーンのリモコンの操縦のための資格
高所作業車 技能教育 10mまで伸びる小型高所作業車の運転に必要

日当の目安と日当や月収・年収

型枠大工を始め職人の月収は、日当×日数で決まります。

日当は親方に使われている職人の立場であれば2万です。

親方であれば2万×日数に、プラスで現場で浮いたお金が入ります。

以下、表で説明します。

立場 内訳
親方 (20,000円×出勤日数)+現場の利益
ベテラン大工 18,000円~20,000円×出勤日数
中堅大工 13,000円~17,000円円×出勤日数
若手大工 8,000~12,000円円×出勤日数

型枠大工の利益の出し方

型枠大工の請負単価は1平米いくらで決まります。

裏を返すと、前述した仕事内容の内建て込みとスラブ貼り以外はお金が発生しないということです。

つまり現場で利益を出すなら、少ない人数で多くの型枠を早く建てる、ということが必要になります。

沢山人数を入れてダラダラ現場を進めていると、職人にお金を払って自分のお給料はなくなってしまうかもしれません。

必要最低限の人数で早く終わらせ、日数が余ったら他の現場の応援に行く。

それが型枠大工の理想的な流れです。

まとめ

以上で型枠大工についての紹介を終わります。

以前こそ現場仕事は3K(臭い、汚い、キツい)なんて言われていましたが、近年は現場内にシャワールームがあったり一斉清掃の時間を作るなど、イメージが良くなってきています。

興味のある方は是非飛び込んでみてください。

本記事が皆さんの参考になると幸いです。

この記事を書いた人
元職人Y

神奈川県横浜市生まれの20代後半の男
5年ほど型枠大工として活動
玉掛けやクレーン操縦など、現場職に必要不可欠な資格を多数保有
現在はWeb系の仕事へ転身し、建設業についてのリアルな情報を発信して認知度向上とイメージ改善に努める

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