建設業界における「職人」、そして「現場作業員」という名称は、どちらも工事現場で働く人のことを指す言葉です。
似たような言葉で混同されがちですが、双方には明確な違いがあります。
人によっては使い分けにこだわりが強い場合もあるので、トラブル回避のために覚えておきましょう。
現場作業員という大枠の中に職人がいる
まず現場作業員とは、建設現場で働く人の総称です。対して職人とは、確かな技量と知識・経験をもったその道のプロフェッショナルを指します。
つまり現場作業員という大枠の中に、職人がいるということです。
ここで気になるのが、現場作業員と職人をどうやって区別しているのか、また現場作業員は仕事が下手なのか、という2点でしょう。
結論を述べると、2者を隔てる明確な基準やルールはありません。仕事が上手いと感じた人に対する、「この人は本当に職人だなぁ」といった個人的観測により定めています。
また現場作業員は仕事が下手かというと、そんなことはありません。上述のとおりそもそも明確な基準など無いですし、むしろ職人だからといって現場作業員でなくなるというわけでもないので、仕事が上手い現場作業員ももちろん沢山います。
現場で働く人=現場作業員、その中でもとりわけ仕事が上手い人が職人と呼ばれると覚えましょう。
土木作業員とは?「職人」「現場作業員」との違いは?
職人でも現場作業員でもなく、「土木作業員」という呼ばれ方もあります。
意味合いとしては現場作業員と何も変わりないのですが、この土木作業員という呼称は少し悪いバイアスがかかった言葉です。
というのも、建設現場の作業員が不祥事を起こした際は、多くのメディアが土木作業員という呼称で報道をします。「土木作業員 事件」などで検索すると、多くのニュースサイトが出てくるので確認してみて下さい。
出典:産経新聞
そのように土木作業員という言葉は、昔からのネガティブバイアスが積み重なった言葉です。一部メディアでは「とび職」「設備業者」といったような表記をしてくれますが、世間一般的にはまだまだ一緒くたに認識されており、悪いイメージが払しょくできていません。
不祥事以外で報道される際は「作業員」であることが多い
一方で事故に遭うなど、不祥事以外では作業員と呼称されます。もちろんこちらも現場作業員と意味合いは同じです。
実際に、安全衛生情報センターでは現場での労働災害事例などをまとめていますが、前章のニュースサイトに対して作業員と記載しています。
出典:安全衛生情報センター
つまりメディアは、悪いことをした現場作業員は「土木作業員」、それ以外で取り上げる場合は「作業員」として使い分けているケースが多いのです。
現場監督からすれば現場作業員の全員が職人
現場監督は現場を指揮し、安全に作業ができるように段取り・調整する仕事です。
その現場監督から見た場合、現場を安全に遂行する作業員は等しくプロフェッショナルであり、全員を職人として扱っています。
実際に各ゼネコンのHPを見てみると現場作業員という表記は少なく、「職人さん」や「職方(しょっかた)さん」とされていることが多いです。
職人と呼ばれることは光栄なこと
よって職人という呼称は、ある種の敬称であるといえるでしょう。
相手からプロフェッショナルだと認められた際に呼ばれるので、職人と呼ばれる=仕事において信頼されているという裏付けでもあるのです。
とくに職人間では、「職人」という言葉の重みがガラッと変わります。職人は負けん気が強く頑固な人が多く、全員が全員自分の仕事にプライドを持っています。
職人の間で職人だと認められることは、これ以上ない名誉だといえるのです。
一人前の職人を目指して日々努力すべし
『お前は大工さんにはなれたけど、まだ職人にはなれていないな』
大工として何でもできるようになり、少し調子に乗り始めたころに大先輩の職人から言われた言葉です。
言われたときは意味が分からず、むしろ「なんだその言い方は。大工さんになれているなら別にいいだろ」と憤慨しました。ですがそこから紆余曲折を経て数年、やっとその意味が分かりました。
仕事を覚えて問題なく出来るようになる程度ではまだまだです。良い物を作ることに限界はないので、日々追求していくことが重要だといえます。
一人前の職人になれるように、妥協せずコツコツと頑張りましょう。