職人のパワハラやいじめは何故減らない?実体験とともに理由を解説

職人のパワハラやいじめは何故減らない?実体験とともに理由を解説
職人のパワハラやいじめは何故減らない?実体験とともに理由を解説

職人の世界にもパワハライジメはあります。

筆者も職人としてデビューしたてで「若い衆」と呼ばれていた頃は、先輩の職人からさまざまなしごきを受けていました。体験したしごきの中には、上下関係や年功序列というだけでは割り切れないものも多かったです。

もちろん、年数を重ねて仕事ができるようになるに連れてそういったものは無くなるのですが、当時は毎日憤りを感じていました

職人の世界におけるパワハラ・いじめについて、実体験を踏まえて解説します。

若い衆だった頃に体験したパワハラ5選

若い衆だった頃に体験したパワハラ5選

スーツを着て仕事をするような一般の企業で、何もしていないのにいきなりわき腹を殴られるなどは稀でしょう。

しかし現場では、挨拶代わりに殴られたりどやされたりは当たり前に起こっており、職人ならば誰しも経験があります。さらに運が悪ければ直接的に生死に関わることや、生活が圧迫するようなことをされるかもしれません。

実際に筆者が体験した、とくにキツイと感じたパワハラ・いじめ案件を5つ紹介します。

「邪魔だ退け!」と足場から落とされそうになる

それは職人として働き始めて、1ヶ月ほどで起こった事件です。

その日、別の現場から応援で来た職人(以後Aさん)は、筆者が所属していた工務店に以前勤めており、朝から筆者の班の人たちと親し気に話していました。

喫煙所は狭かったため、筆者も自然とその輪の中に。内容としては昔の話で、書けないような物騒な話をしていたことを覚えています。(普通に最低な犯罪話でした)

その後Aさんが離れたタイミングで親しかった先輩から

先輩職人
先輩職人
あの人色々やらかして少し前まで入所していたから気を付けろよ。頭に血がのぼると見境ない人だから

と言われたことで、筆者のなかでAさんの危険度は跳ね上がりました。

そして実際に仕事をしてみると、一人でカッカするタイプの厄介な人であることが分かります。「この人の近くだとヤバそうだなぁ」と思った筆者は、少し離れて仕事をしていました。

筆者は元々建築士志望で、幸いなことに初めから図面が読めて、現場の流れもある程度理解できていました。よって経験1ヶ月ながら「◯◯やってきます!」といえば一人で任せてもらえており、この日ほどそれを感謝した日はありません。

ただ直後、それだけでAさんから逃れるには不十分だったことを思い知ります。皆と少し離れた足場上にて作業をしていると、横からAさんが凄い勢いで近づいてきました。

未だにあの時なぜそんなに急いでいたか、なぜそんなことをされたのか分からないのですが、「邪魔だ退け!」と言われて筆者は下半身から担ぐように持ち上げられ、足場の外に投げ出されます。

嘘だと思うかもしれませんが本当の話で、まさかそんなことをされると思っていなかったため、咄嗟のことに抵抗できませんでした。

もちろん安全帯をしていましたし、落下しきる前に手すりを掴んだため無事です。その場所も実際地面から3mくらいの高さであったため、たとえ落ちていても大きな怪我にはなっていなかったでしょう。

たださらに印象的だったのが、持ちこたえた筆者の姿をちらっと見るや否やAさんが発した「いっちょ前に耐えてんじゃねぇ!」という謎の怒声でした。

偶然、その一部始終を現場の所長が見ておりAさんにNGが出たため、その日の昼でAさんは現場を去っていき助かります。

その後分かったのですが、当時の親方は応援を呼んだ工務店にAさんがいることを知らず、発覚したときNGを出そうか迷ったそうです。

実際にその件以降、筆者はその後職人を辞めるまで一切Aさんと会っていません。色々な工務店をつまはじきにされている、という噂は聞いていましたが…。

強引な借金+それを踏み倒される

パチスロが好きな職人は多いです。壊滅的な人だと、給料の前借りや借金をしてでも通うなんてこともあります。

もしくはサボり癖があり、副業をしているわけでも貯金があるわけでもないのに仕事を沢山休んで、生活するためのお金を借りる職人もいます。

筆者がいた工務店で別の班に所属していた50代の職人(以後Bさん)は、その究極系ともいうべき人でした

前々からBさんのサボり癖・借金癖は聞いており、他の職人からも「Bさんには金を貸すなよ。戻ってこないから」と口酸っぱく言われていた筆者は、ある日Bさんに飲みに誘われます。

借金する立場でありながら人に奢ることもある人だったので、筆者も「一回り以上離れた後輩からは流石に借りないよなぁ」と安易に考えて飲みに行きました。

ただ飲みだして少しすると、以下のようなことを言われます。

  • 実家でゴタゴタがあって解決するためにお金がいる
  • 30万くらい必要なんだが、いくら出せる?
  • あ、ここの飲み代はもちろん払うから安心しろ

どういう思考回路をしているのか、すでに筆者が貸すことが確定していたんですね。もちろん、その頃もまだまだ駆け出しだった筆者は、正直にお金に余裕が無いと言いました。

ですがそれに対するBさんの言い分は、想像を絶するものです。

Bさん
Bさん
お前は現場に弁当を作ってきているし、買い食いもしていないからお金を貯めているだろう。もし無いなら金融会社から借りてくれ。

お金にだらしない職人にありがちなのが、自分に都合の良すぎる考え方をすることです。筆者は余裕が無いから3食自炊をしていたのですが、Bさんは節約している=貯金があると考えたんですね。そして何故か筆者であれば貸してくれると思い込んでいて、厄介極まりなかったです。

さらに厄介なのがその後です。どれだけ嫌だ嫌だと言っても無駄だったので、「自分は親の都合でブラックだと思う」と伝えました。それでも諦めず、無理やり近場のむじんくんが入っているビルまで連れていかれ、借りられるかどうかまで確かめさせられます。

適当に操作をしてわざと通らないようにして、審査に通らなかったと伝えてもまだ諦めません。どうにか少しでも金を集めてくれ(貸してくれ)と頼まれて、最終的に1万円ほどを貸しました。

もちろん、以後そのお金は返ってきていません。ダメ元で本人に直接、また人づてでも数回返済を頼みましたが無駄でした。

強制的にパチスロへ同行させられる

前章でも少し触れましたが、職人にはギャンブル好きな人が多いです。

筆者はギャンブルに興味が無かったのですが、それでも駆け出しのころは週3回ほどパチンコ屋へ通っていました。

同じ班の先輩職人であるCさんのせいです。

Cさん
Cさん
俺なんかも若い頃先輩と一緒にパチンコよく行ってたからお前も行くぞ。これも仕事だ

仕事が終わって疲れているのに帰れず、興味が無い空間に放置されるなんて、苦痛でしかありませんよね。

帰りが予定より遅くなるせいで家事をする時間も減って、早く寝れるはずだったのに寝れず、次の日の仕事にも影響を及ぼすので、筆者からしたらこのエピソードが今までで一番嫌でした。

勝ったら何かくれるわけでもなかったので、本当に旨味が無い時間だったなと今でも思います。

些細なことで路上で恫喝される

このエピソードは、前章のCさんと同じ人によるものです。

Cさんは当時、筆者を含めた若い衆のプチ親方のような立場でした。そして上述のような傍若無人さのせいで、他の若い衆もさまざまな不満を抱えていたのです。

きっかけは、筆者含め若い衆数名が「コレはやめてほしい」と伝えたことでした。というのも、以前からCさんは若い衆に向けてこのように言っていたからです。

Cさん
Cさん
俺も完璧人間じゃねーから、嫌なところとか変えて欲しいところがあったら遠慮せず言ってくれよ。

その言葉を信じて伝えたところ、Cさんは顔を真っ赤にして大激怒しました。「大人をなめんじゃねぇ」「おちょくってるのか」といった伝えたことに対し的外れな言葉から、「なんで俺がお前ら若い奴らのために変わらなきゃいけねーんだ」といった本末転倒な言葉まで、かなり大きな声で怒鳴りながら伝えられます。

もちろん筆者が伝えたことは全て正当なもので、「パチスロに行きたいからって僕らにお金借りないでください」「何かを支払うとき僕らのクレジットカードをアテにしないでください」といった、一般常識的なことです。

それに対して怒鳴って反論され、恫喝めいた言葉を人通りもそこそこある路上にてぶつけられました。傍から見たら若い衆がただ単に怒られているように見えたであろうことも、とても悔しく感じたことを覚えています。

休日に子供の世話を任される

Dさん
Dさん
次の日曜日空いてるか?俺の子供のバスケの試合見に行こうぜ

ある日、一回りほど年上の職人であるDさんに言われました。筆者も昔バスケをやっており、久々に観たいなと感じたために快諾して、日曜日を迎えました。

そして当日、開催される小学校にDさんと共に入ります。Dさんに付き添って知り合いの親御さんに挨拶を済ませ、その後Dさんの子供が出る試合を観終わります。

総当たり戦で複数回出番があるそうで、一旦筆者とDさんは外へタバコを吸いに行きました。すると一服している最中にDさんが、「少し離れるけど戻ってくるから待ってて」と言って、筆者は一人残されます。

結果としてDさんはパチスロに行っていたらしく、「当たったから戻れない」とだけLINEしてきて全試合が終わる時間まで帰ってきませんでした。

子供が嫌いなわけではありませんが、やはり本来休日であった日を潰されてしまうのは苦痛です。

そして自由時間にお子さんと遊んだりお昼ご飯や飲み物を買ったりなど、筆者がいなかったらどうするつもりだったんだろうと考えたところで、最初から抜け出すつもりで筆者を誘ったんだなと気付きました。

帰ってきた際に「悪い悪い」とだけ言ってお土産なども無かったので、貴重な休日を無駄に消費したなと後悔したエピソードです。

知人から聞いた洒落にならないいじめエピソード

知人から聞いた洒落にならないいじめエピソード

本件は筆者の実体験ではありません。知人の職人(Xさん)が体験した壮絶ないじめエピソードです。

職人の世界には、反社会的な筋から派生して仕事をしている人もいます。Xさんは偶然、そういった人たちが身内だけでやっている工務店で働いてしまいました。

その際、以下のようなことが日常茶飯事であったそうです。

  • 理由を付けて日当を1,000円にされる
  • 車のなかで服を脱がされ外に出される
  • その際タバコの火を押し付けられる
  • 暴力や暴言で「辞めるな」と脅してくる

初めて聞いた時はさすがに嘘だと思いましたが、実際にXさんの友人の職人や、その工務店の現場へ応援に行ったことのある職人から裏がとれたために、本当にあった話だと分かりました。

職人の世界では昔ばかりを見る

職人の世界のイジメも、本質は何ら変わりません。自分と違うことや、自分が気に入らないことが原因で虐めるのです。

とくに職人には短絡的で視野の狭い人が多くいます。自分が好きだからみんな好きだろうといった決めつけをして、それに異なる人を嫌うのです。

また職人の中には、昔からの慣習を過剰に重んじる人が多くいます。今でこそクリーンな建設現場は以前、暴言や怒声が飛び交い暴力もある粗暴な環境でした。そういった昔の建設現場で育ち、今の建設現場や若い職人を「昔と変わった、俺が知っているのと違う」として不満を感じているのです。

だから建設業界で若い職人が育たない

そういった環境下であるために、建設業界は若い職人が育ちづらいです。

実際に筆者は3年ほど一番年下のポジションを保持していましたし、その後に入ってきた若い子もすぐに辞めていきます。

理由を聞いたところ、やはり先輩からのしごきが原因でした。

もちろん職人の仕事は、心身的な強さが無いと続けられない職業であるため、多少の逆境に耐えられないといけないことは確かです。

ただ若手が育ちやすく仕事を続けやすい環境を作るためには、時代とともに職人の在り方も変わっていかなければならないのかもしれませんね。

パワハラやイジメに耐えられなくなったら…

職人のパワハラやイジメに耐えられなくなったら…

職人として働くなかでパワハラ・いじめに耐えられなくなったら、職人を辞める工務店を移るかの2つに1つしかありません。

ただそのパワハラがちょっと小突いてくるといった比較的軽微なものである場合、残念ながら職人を辞めることが最適解だといえます。

身体を動かす仕事である職人の世界では「強めのスキンシップ」「多少のじゃれあい」などとして、ちょっと手を出すくらいは高頻度で起こります。もちろん嫌なものは嫌ですし、パワハラであることは変わりないのですが、そのたびに悩んでいるようでは、職人の仕事を続けるのは困難です。

「そのうち見返してやるからな」と割り切って表面上はヘラヘラできるくらいであれば、別の工務店に移っても上手くやっていけるでしょう。

そして辞める場合、せめてもの仕返しにガツンと言ったり労基に駆け込んだりしたくなる方も多いでしょう。ただ、今の工務店を辞めた後も建設業を続けていくならば、あまり得策ではありません。

建設業界は思ったより狭いので、良くない辞め方をすると工務店移転後のトラブルを誘発させるかもしれないからです。

悪質なパワハラ・いじめによって悩む職人の方は、慎重に行動して後悔をしないようにしましょう。

メモ

また本記事内に過激なエピソードが登場しましたが、全ての職人に当てはまることではありません。割合でいえばそういう職人は、全職人のうち1割にも満たないでしょう。ただ多くの工務店に一定数、そういった職人がいる可能性はあると覚えておきましょう。

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元職人Y
神奈川県横浜市生まれの30代前半の男 5年ほど型枠大工として活動 玉掛けやクレーン操縦など、現場職に必要不可欠な資格を多数保有 現在はWeb系の仕事へ転身し、建設業についてのリアルな情報を発信して認知度向上とイメージ改善に努める