近年、音楽系サブスクの普及やYouTubeやTikTokといった映像・音楽系SNSのコンテンツ充実によって、誰しも気軽に好きな曲が聴けるようになりました。
2000年ごろからCDの販売枚数が年々減っていることは深刻な問題ではあるものの、多くの方にとって音楽が身近な存在になったことは間違いなく良いことでしょう。
ただその反面、たくさんの音楽が聴きやすくなったことによりユーザーの耳も肥えてきて、昔なら気にならなかったような細かい歌詞のおかしなところなどに気づいてツッコミを入れる…といった人も増えています。
本稿においても、そのようなツッコミどころのある歌詞を5つ紹介したいと思います。
過剰な比喩表現など、歌詞独特の表現技法については含めない
例1:目を閉じれば億千の星 → 見えない
例2:ナマ足魅惑のマーメイド → 足はない etc…
まちがいさがし/菅田将暉
俳優であり歌手でもある菅田将暉さんが歌う『まちがいさがし』。
米津玄師さんが作詞・作曲・プロデュースをして、パーフェクトワールドというドラマの主題歌であったこの曲は、2021年時点でもうすぐ1.8億再生に届くほどに多くの人に聴かれた大ヒット曲です。
そのまちがいさがしにおいて、ツッコミたいのはこの部分の歌詞。
まちがいさがしの間違いの方に
生まれてきたような気でいたけど
一見なにも問題ないかと思われるこの部分について、まちがいさがしの間違いの方ってどっち?というツッコミを入れたいと思います。
というのも、多くのまちがいさがしでは「みぎ・ひだり」や「うえ・した」のような位置の表記だけで、「正・誤」でイラストを区別しているようなものはほとんど無いからです。
実際に、子供の知育学習コンテンツを多く配信する株式会社パディンハウスのまちがいさがしにおいても、「こっちが正しい絵で、こっちが間違いの絵」といった表記がされている作品はありません。[注1]
つまり、まちがいさがしは2つの絵に差異があるだけで、どちらが正しいどちらが間違いという線引きがされているわけではないのです。
もちろん、一部には正誤で表記されてるものもあります。また、あくまでそういった心情を表現しているものだとは思いますが、大ヒットして聴く機会が多かっただけに都度ツッコミたくなった1曲です。
[注1]子供の知育学習コンテンツサイト「ちびむすドリル」|株式会社パディンハウス
瞳を閉じて/平井堅
平井堅さんが歌う『瞳を閉じて』は、令和3年時点に20代の人であれば一度は聞いたことがあるでしょう。
大ヒット映画である『世界の中心で、愛をさけぶ』の主題歌にも使われた、平成を代表する名曲です。
その歌のなかで、ツッコミたくなるのはこの歌詞の部分。
瞳をとじて君を描くよ
それだけでいい
結構有名なフレーズであり、多くの人がツッコミを入れたと思います。内容としては、とじるのは瞼であって瞳ではない…というものです。
医療法人社団 医新会が解説する、目の構造についての一文を見てみましょう。
ひとみは瞳孔といわれます。虹彩の中央にあるまるいあなで,光の入口です。これはカメラでいえばシポリにあたるところで,光が強い(明るい)と小さく縮み,夜や暗いところでは大きくなって目の中に入る光の量を加減します。また,それと同時に,近くを見るときは縮小して像をはっきりとさせます。
引用:医療法人社団 医新会|目の構造
瞳=瞳孔であり、また瞳孔を閉じる力は開く力よりも弱いため、どうしたって閉じられません。
リリースされた直後から、多くの方がツッコミを入れた有名な歌詞です。
君はロックを聴かない/あいみょん
平成後期から令和にかけて若年層にハマったあいみょんの、『君はロックを聴かない』。
こちらの曲内でツッコミたい歌詞は、以下の部分です。
僕の心臓のBPMは190になったぞ
おそらく察しが付くと思います。心拍数(心臓のBPM)が190になるというのは、すぐに救急車を呼ぶレベルの異常事態なのです。
厚生労働省が運営するe-ヘルスネットの記述から、心拍数190の異常性を確認できます。
一定の時間内に心臓が拍動した回数のことで、通常は1分間の回数(bpm: beat per minutes)で表現されます。
心臓が血液を送り出す際には、動脈にその収縮運動を示す脈拍が現れます。このため脈拍数や脈拍も同様の意味になります。心拍数の正確な測定は胸部にセンサーを付けて心電図や心拍計を用いる方法が用いられますが、簡易な方法としては手首の動脈に指先を添え脈拍の回数を数える方法もあります。健康な成人の安静時の脈拍数は、個人差はありますが、1分間に約60~100回となっています。
上記のとおり、通常は60~100回であるはずの心拍数が2倍近い190になっているのは、ポップなメロディに乗せても看過できないほどの緊急事態なのです。
キンモクセイ/オレンジスパイニクラブ
2018年にリリースされて、中高生の間で大流行したオレンジスパイニクラブの『キンモクセイ』。
爽やかな一曲でリリースされた当初筆者もよく聴いたのですが、サビの部分に少しツッコミたい部分があります。
夏の終わりの初夏の気温は 気持ちをとっくにのせてた
ご覧のとおり、「夏の終わり」と「初夏」という対立した単語が一文のなかに混在しています。夏の終わりなのか初夏なのか…どっちか分かりづらい状態です。
ただこの一曲は全体的に修辞法をゴリゴリ用いており、なんだかわからないけど良い…俗にいう「エモさ」を出すためにわざとこういった表現をしているのだと思われます。
歌詞だけではわかりづらいですが、おそらく以下のような意味があるのでしょう。
- 夏の終わり=実際の状況
- 初夏の気温=主人公の恋心(熱量)
歌詞の世界観に没入してみるとなんとなく上記のような情景が浮かびますが、それでも初めて聴いたときはツッコミをいれたくなった一曲です。
シャングリラ/チャットモンチー
平成に流行ったガールズバンド チャットモンチーの代表曲『シャングリラ』にも、些細な点ですがツッコミたいところがあります。
以下の歌詞をご覧ください。
携帯電話を川に落としたよ
笹舟のように流れてったよ
状況をイメージもしくは再現してもらえばわかりますが、大体の携帯電話が水に浮かぶことなく沈みます。
また水没しない携帯もあるにはありますが、それでも笹舟のように軽やかに水面を流れるようなことはありません。
はじめてこの曲を聴いたときは、思わず「え、なんで?」と口に出してしまったことを覚えています。
ただ近年では、海であろうがなんであろうが完全防水かつ水に浮くスマホケースなども販売されています。
リリースされた時代が時代であれば、ツッコミたくなることもなかったかもしれませんね…。
歌詞が描く情景に没入してみると面白い
以上で、ついついツッコミたくなる歌詞の紹介を終わります。
本稿で紹介したのは主に「それはないでしょう」というツッコミが入る歌詞でしたが、別角度のツッコミが入るような曲はまだまだ多くあります。
そういった歌詞について、あえて没入して情景を想像してみると良い暇つぶしになるので、もしよさげな歌詞を見つけた人はぜひ試してみてください。