特定の動物には「天敵」という、その種の存在を脅かす生物がいます。
そして私たち人間と同じヒト科の動物であり、動物園などでもよく見かける馴染み深い存在でもあるゴリラにも、天敵とされている生物がいるのです。
ゴリラの天敵について、さまざまな情報・データを基に解説します。
目次
【大前提】ゴリラの天敵は肉食動物全般
ゴリラの天敵は肉食動物全般です。またそのなかでも、とくにヒョウによる被害が多々確認されています。[注1]
というのも、そもそもヒョウやライオンといった肉食動物は、基本的に動物の肉であればなんでも食べることができます。たとえゴリラであっても、状況さえ整っていれば他の草食動物と同様に襲われてしまうのです。
そしてヒョウはゴリラと同じくアフリカに生息し、これまた同じく樹上を好みます。 上述したとおり、実際にヒョウによるゴリラへの被害は他の動物と比較して多く確認されているため、ゴリラの天敵を挙げるとすれば真っ先にヒョウの名前が挙がるのです。
ヒョウを主とする肉食動物全般
知っておくべき「頂点捕食者」という概念
ゴリラの天敵について考える際、自然界の食物連鎖におけるゴリラの立ち位置についても立ち返るべきです。
食物連鎖における、生態系ピラミッドの頂点に位置する動物を「高次消費者」といいます。高次消費者は「頂点捕食者」とも呼ばれており、これらに属する生物は自身を捕食する存在がいないことから天敵が皆無であるといえるでしょう。
一方でゴリラは、生態系ピラミッドにおける「一次消費者」に属しています。ゴリラは草食かつ昆虫も食べるため雑食とされており、生態系ピラミッドの細かい位置づけとしては以下のとおりです。
この構図からも判断できるように、ゴリラを捕食する可能性がある生物は自然界に多くいます。
生息地や生態の関係でヒョウによる被害が目立っているだけで、実際のところ上述のとおり肉食動物全てがゴリラの天敵になりえるということです。
ゴリラは知能が高いため危険を避けられる?
2018年頃、米国にあるゴリラ財団にいた「ココ」というゴリラをご存知でしょうか。
ココは知能指数が人間と同程度である95ほどあり、手話を使ってコミュニケーションがとれるほど高い知能を持っていました。[注2]
そのようにゴリラは高い知能を持っているため、リスクを回避する能力も備えています。
強靭な肉体に付随して争いを避ける能力が高いため、多くの肉食動物が闊歩するアフリカにおいても目立った被害が出ていないのでしょう。
[注2]ゴリラ財団HP|The Gorilla Foundation
ゴリラに凶暴性があれば天敵はいなかった?
もしもゴリラが凶暴な生物であったならば、天敵は存在していなかったかもしれません。
たとえば「世界一恐れを知らない動物」としてギネスブックにも掲載されたラーテルは、小柄な体躯ながらも大型肉食獣にも物怖じしない獰猛さをもっています。
またその獰猛さにくわえて、攻撃を通しにくい厚くたるんだ外皮や毒への耐性など、戦闘特化の能力を兼ね備えているため、ライオンやアフリカゾウが関わりたくないと判断して自分よりずっと小さなラーテルを避けることもあるのです。
一方でゴリラは基本的に温厚な性格で、上述したように争いを避けることもあります。
「こいつに関わると面倒だ」と思われないため、獰猛な性格の動物に比べると多少狙われやすいでしょう。
もちろんラーテルも自然界において、捕食されることは少なからずあります。それでも自分より大型の動物が自分を避けることがあるというのは、従来天敵になりえた存在の減少につながっているといえます。
ラーテルよりも大きく力も強いゴリラがもし、ラーテルと同じほどに凶暴であったならば、肉食動物たちも手を出せない恐ろしい存在になっていたかもしれません。
肉食動物よりも感染症こそが深刻
ここまでゴリラの天敵について、肉食動物を主として解説をしてきました。ただゴリラにとっては、肉食動物よりも感染症こそが真に深刻な問題です。[注3]
たとえば2000年頃にウガンダで猛威を振るった「エボラ出血熱」は、誰しも1度は聞いたことがある有名な感染症でしょう。
そして専門家によるとこの2000年にあったエボラ出血熱の感染症拡大によって、ウガンダに生息していたゴリラの1/3が死んだ可能性があるそうです。
肉食動物による被害よりも甚大なものであるため、ゴリラにとっては感染症こそが肉食動物よりも脅威だといえるでしょう。
[注3]厚生労働省検疫所|エボラウイルス病について(ファクトシート)
ゴリラの真の天敵は人間なのかもしれない
ここまで肉食動物や感染症がゴリラへもたらす被害について解説しましたが、我々人間もゴリラの存在を脅かしてきたことを忘れてはいけません。
人間がゴリラに対しておこなったのは、密猟と森林破壊の2つです。
密猟と聞いても少し遠い世界の話だと感じるかもしれませんが、そんなことはありません。2021年現在より1年前である2020年6月にも、ウガンダで生活していたシルバーバック・ゴリラが密猟者に殺されてしまう事件がありました。[注4]
また森林伐採や採掘による鉱山開拓もゴリラの住処を奪うこととなり、結果としてゴリラの生命そのものを脅かしています。
そういったことから、ゴリラにとっての天敵は人間であるという一説もあるのです。
ただ、全ての人間がゴリラに対してマイナスの行動をしているわけではありません。実際にゴリラを取り巻く環境を深刻に考えた人々が森林区域を保護する活動もしています。
人間たちからしても馴染み深い存在であるゴリラを守れるのは、他でもない我々人間です。
間違っても人間がゴリラの天敵になんてならないように注意しつつ、多くの種と共存して生きていけることを願います。
[注4] BBCニュース|有名なシルバーバック・ゴリラ、密猟者に殺される ウガンダ
[注5]バードライフ・インターナショナル東京|独特な生物で溢れ、危機に晒されているアフリカの熱帯雨林が国立公園に
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